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社会を変えるコラム(7)--ロビイングの技術が学べます!

第11章 統計調査(データ)の必要性(担当:明智カイト)

· 社会を変えるコラム

普通であればNPOが政策を提案しても、なかなか実現するものではありません。社会問題を発見し、データ等をとり、メディアを通じて社会の認識を高め、解決すべき事由であるという世論を育てていくことによって、ようやく議員が立法に動き出しますが、それでも立法化されないケースの方が多いのが現状です。スムーズなロビー活動を進める上でも、統計調査(データ)は重要な部分になってきます。しっかりとおさえておきましょう。

データを使いこなす

そもそも社会問題の中にはデータがとられていないものも多いため、まずは基礎的な調査を通じて「個人問題」だと思われていたものを「社会問題化」していく必要があります。

議員や官僚に対して要望書を提出する際に気を付けたいことは、社会課題であると示すエビデンスを一緒に添付することです。すでに研究者やNPOなどにより統計調査が行われている時はその統計を提出します。既存の資料がない場合は自分たちで調査を行い、数字を出していく作業が必要になります。

また要望書等の資料は、協力してくれる議員が他の議員や官僚等に対して簡単に説明ができるように簡潔な内容が望ましいでしょう。

要望の根拠となるような資料はなるべく充実させます。関連する新聞記事や研究、当事者の声、データなどです。特にデータは大事になってきます。「当事者の声」「体験談」が喜ばれるときもあります。

・ロビイングセットの基本

要望書(提言書)

団体概要(住所、代表、活動内容など)

補足資料(体験談、データなど)

新聞の記事など

この4点が揃っていればベストです。

白書をつくる

様々なNPOに「民間白書をつくること」を薦めています。特定分野に関する調査を行い、「社会問題」という形で数値化していきます。「マタハラを受けた経験が〇%」「セクシュアルマイノリティが〇%」といった数字が出れば、報告書をまとめ、プレスリリースを撒き、関連省庁の記者クラブなどで会見を開き、報道を促していきます。また、そうした数字を手に持ち、議員や役所を尋ね、議題として設定してもらうこともできます。

ロビイングのポイントは「質」と「量」-視える化の必要性

議員や官僚は「今すぐ支援が必要か(優先度)」「命に関わるのか(深刻度)」といった質的要素と、「どれぐらい困っている人がいるのか」「どれぐらいニーズがあるのか」といった量的要素の2点から優先順位を決める傾向にあります。そのような意味でも補足資料(体験談、データなど)の内容が重要になってくるのです。

「質」・・・当事者自身が顔と名前をメディアに出して苦悩や不利益を伝えることで、社会全体で課題を共有していく。

「量」・・・基礎的な調査を通じて、「個人問題」だと思われていたものを「社会問題化」する必要がある。

最後になりますが、統計調査を素人が行うのはとても大変なことです。できれば統計の専門家などに協力を依頼するようにしましょう。