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社会を変えるコラム(6)--ロビイングの技術が学べます!

第3章 ロビイングと政治(担当:明智カイト)

· 社会を変えるコラム

ここではロビイングを行う前に国会や内閣、そして国会議員の主要プレイヤーたちが各々どのような役割を果たしているのか、またその内部はどのような仕組みで動いているのか各用語に沿って解説していきます。

国会や内閣などの仕組みや役割

  • 国会とは

国会は一般に立法府と呼ばれているように、「国の唯一の立法機関」として法律の制定をはじめ、憲法の改正の発議、予算の議決、条約の承認など、広く国の立法に関する権能を持っています。同時に「国権の最高機関」としてそれにふさわしい国政上の重要な権能、たとえば内閣総理大臣指名権、裁判官弾劾権などを有しているのです。

  • 内閣とは

国の行政権を担当する最高の合議機関。政治的に普通、「政府」と称されます。

  • 国会議員の仕事とは

国会議員が行っている仕事は主に、社会のルールを定めるために法律を作ること、さまざまなことを行うための予算を作ること、外国との約束である条約を承認すること、国のリーダーである内閣総理大臣を選ぶことに整理されます。

  • 委員会、部会、議員連盟など

国会の中には、「法務委員会」など、テーマごとに「◯◯委員会」というものが存在しています。国会議員は通常、所属する党の役職とこの委員会に属します。ただし、入閣した議員は例外であり、彼らは内閣内の「◯◯大臣」や「◯◯政務官」といった役職に就きます。また各政党の内部には部会というものが存在しています。さらに必要に応じて議員連盟などの勉強会が開催されます。このように大小さまざまな組織が混在しているため、そのときどきによってそのテーマに合致した組織に話を通していかなくてはならないのです。

ロビイングにおけるさまざまな手法

ロビイングに関係する政治の世界の仕組みや個々の用語について整理したところで、実際にどのようなロビイングの手段が存在するのか列挙していきます。

【党の役職、◯◯委員会に属す国会議員に要望できること】

ここでは、国会議員のなかでも、内閣への入閣をしていない国会議員に対して可能なアプローチ方法を紹介していきます。

  • 党の政策に関して働きかけてもらう

例:男女共同調査会の会長である××議員に「△△党の男女共同調査会で性的マイノリティのことを取り上げて欲しい」と要望することができる

  • 「◯◯委員会」で質疑を行ってもらう

例:◯◯委員会の××議員に「◯◯委員会で性的マイノリティのことを質問して欲しい」と要望することができる

◯◯委員会で答弁を行うのは内閣つまり行政の人間であるため、ここで意味のある答弁を引き出すことができれば大きな成果となります。

  • 各府省庁の官僚に対して質問を行ってもらう

例:厚生労働省に対して××議員の名義で質問してもらうことができる

各府省庁が行っている現状の取り組みや、把握している数字などについて聞き出すことができます

  • 法律の作成や改正、その他「◯◯大綱」や「◯◯白書」などに特定の内容を

盛り込んで欲しいと要望することができる。ただし、その議員が所属している委員会や部会に関連するものに限る。

  • ある特定の議員連盟に参加してほしいと要望できる

議連の目的は、政府に対しての意見表明や、最終的には議員立法を行うところになるため所属している議員は多いほうがよい。議連は議員個人の好き嫌いで参加/不参加を決めるものであるため、見込みのある議員には積極的にアプローチしていくことが望ましい。もしくは、議連に対して扱ってほしいテーマを要望することもできる。

  • 衆議院議員会館、参議院議員会館の会議室を借りてもらうことができる

例:院内集会を開くために××議員の名義で参議院議員会館の会議室を借りてもらう

  • シンポジウムや院内集会に招待したり、メッセージを寄せてもらうことができる
  • 通行証を借りることができる

通行証があれば国会議員会館を自由に動き回ることができる

【内閣に入閣した国会議員に要望できること】

ここでは、内閣に入閣した国会議員に対して可能なアプローチ方法を紹介する。入閣した議員は、関係する府省庁に対して影響力を持つため、彼らにアプローチすることは非常に有効な手段である。実際に要望する場合は、「厚生労働大臣の××殿」というように各府省庁宛に要望する形となります。また先に触れた通り、委員会で答弁をするのは内閣の人間であるため、委員会での質疑の際にこちら側に有利な答弁を引き出すために、あらかじめ要望書を送付しておくのも有効です。

ただし注意しなければならない点がいくつかあります。まず一つは、入閣すると議員の活動は制限されてしまうということ。具体的には、内閣に入ると議員個人の活動や議連での活動ができなくなってしまいます。そのため、中心的に動いてくれている議員が入閣した際の対応については考えておいた方がよいかもしれません。

もう一つは、なにがなんでも各府省庁の大臣に要望をすれば良いというわけではないということ。内閣のなかには大臣・副大臣・政務官という三役がいて、それぞれ役割が決まっています。たとえば厚生労働省のなかでも、子育て関連はだれで、年金はだれ、医療はだれ、という風にそれぞれ担当があるのです。そのため、いくら肩書きとしては大臣が一番上であったとしても、要望書を出すときにはテーマごとに担当の人宛に出さなくてはなりません。そのプロセスを守らなければそれだけで話を聞いてもらうことができなくなるため注意しましょう。

ロビイングをするにあたっての注意点

ロビイングをするにあたっては、どこか一つの政党に偏って行うのではなく、超党派でさまざまな政党の議員に働きかけるようにしましょう。そしてその際に重要になってくるのは、どの政党から回るのかという順番です。まずは、与党→野党の順番でまわります。さらにそのなかでも与党が複数ある場合は大きな党から順番にまわります。これは野党の場合も同様です。

なぜなら、与党というものは内閣と一体であるため、与党の議員であれば直接行政・官僚に話を通すことが可能だからです。野党の場合、行政や官僚に働きかけをするには質問主意書などの手続きが必要となってくるため話が少しややこしくなってきます。ロビイングを行う際には、まずは与党から話を通していきましょう。

また、各政党に当選回数の多い議員を一人は必ず確保することも重要になってきます。あとは、当選回数が1回生でも、2回生でもかまいません。味方となる国会議員は多いほうが良いのでなるべくたくさんの国会議員に声掛けしてください。たとえ議員の秘書に跳ね返されたとしても諦めずに、必ず議員本人と話をするようにしましょう。

また、各政党への要望は『色』を変えていくことが肝要です。党によって戦略は異なってきます。つまりアプローチする党によって、その「色」を変えていかなくてはなりません。政党ごとに動いてくれるイシューは異なってきます。それぞれの政党に関してその部分をきちんと把握して、それに合わせてこちらの要望にもそれぞれの「色」をつけていかなくてはならないのです。